東日本大震災ビッグデータWS project 311に参加した その8

首都圏における帰宅困難者モデリング その5

@y_benjoさんと野良分析チームとしてやってきた成果を発表しました.


首都圏における帰宅困難者のモデリング 最終報告
from ybenjo

内容については,これまでもメモ書きを残してきましたし,@y_benjoさんによるエントリー 東日本大震災ビッグデータワークショップ Project 311に「野良分析チーム」として参加したもあるので,参照してください.

当日の発表で気になったもの

全部は挙げられませんが,以下は気になりました.中間発表で「根性マイニング」(目視で読むべし読むべし)の話題となりました.根性マイニングとは結局,生データを眺めてデータの特性を把握する,読みながら自分の中で人々の行動原理や現象について仮説を立てる,そのような行為だと理解しています.以下のシステムはその根性マイニングを行う際に非常に役立つのではと思います.

今回のWS参加者しか中身を見ることができないのが非常に残念です.

気仙沼市 鈴木さんの言葉

昨日は最後までいることができなかったのですが,最後のクロージングセッションにおける気仙沼市の鈴木さんの話は必見なので,必ず見ておくように!と神戸大の井料さんから終了後連絡を頂いたので,正座してみました.(以下のyoutubeの1:32:10あたりからです.)

時間がない人もいると思うので,文字起こししました.(問題があれば削除するのでご指摘ください)

まず,皆様の発表を聴かせていただきまして,大変ありがとうございました.


こちらを見ながら発表したいと思います.こちら津波の第一波,逃げようと思っても,船が逃げられません.津波に,ここは内湾です,低い津波です,市内でも.それがいまからきます.皆様,様々な分析や既に仕組み作りをされております.これは今後に向けて,また村井先生からも今後大きな動きがあると聞き,被災地も皆様に期待しているとともに,将来の天災に大きく役立つことと思われます.


また,行政機関が発する第一次情報の重みというものも今回痛切に感じました.全ての基本がそこにあるかもしれません.しかし,人員不足の課題もあります.その中で後方支援を行っていただけるということも今回話題に上っており,心強く感じております.


そして,よく「想定外」という言葉を使うなと言われますが,気仙沼市,停電になり,電気が全て付くのに2ヶ月かかりました.断水で,水道が全て開通したのは3ヶ月かかりました.尋ね人は市役所のロビーに紙で貼るという状況でした.これが実情です.


たぶんこちらでは大丈夫かと思われますが,これもご覧ください.車が両方向埋まっています.高台に逃げようとして止まっているのではなくて,あっちにもこっちにも逃げようとしています.逃げるだけではないんです.たとえばこれが情報があればどうにかなるとも考えられますが,家族を心配してあえて戻るという方もいらっしゃるんです.ですから,家族の安否がわかれば,わざわざ津波のくる危ないところに行かないで済む,そういうこともあるかもしれません.


この停電,もしかすると,いままで皆さんが研究していただいたことが機能しないということもあるかもしれません.そうならないことを祈っておりますが,可能性として.そして怖いのは「助けて」というツイートがあったら,助けに行かなければならないか?電話と同じ意味を持つのか?という問題もあります.


こちらは中央公民館というところです.実はこちら,二階,屋上,それでも危険だからということで,みんなで手を取り合って高く高くと上がっていきました.この後,このあたり一帯が火災に包まれます.さきほど油缶が流れておりました.重油には火は付かないそうですけれども,灯油やガソリンで熱くなったので火が付いて,周りが火の海になり,この上に残った子どもとお母さん,火に巻かれて死ぬくらいだったらと子どもの首に手をかけたというところまであります.幸いにも助かりました.というのは,ここで最後,SNSの光明と言いますか,お母さんが園長先生がもうダメかもしれないと外国の子どもにツイートをしました.子どもがそれを拡散して,東京の猪瀬副知事が見ました.そして翌朝,東京消防庁のヘリや救助部隊が来てくれました.それでヘリでつって,次の日,子どもから助けることができた.これが私が実際に感じた,SNSでほんとに災害時,効果を発揮したという.


しかし今回,重みという点で,情報の怖さ,ありがたさ,両方感じているところです.是非,皆さんには停電があってもなんとかして生きる野性を備えた知識人であり続けてください.本日はありがとうございました.皆さんに期待しております.

ビッグデータはログデータだという話を前回のエントリーに書きましたが,やはりデータを分析していると,その外側の実世界のことを忘れてしまう,そんな瞬間は多くあるように思います.しかし,今回のデータは一人一人の生き死にに直結しうる.そんな当たり前のことを思い出させるこの鈴木さんの話に対して,真っ正面から対峙できた成果発表が何件あったでしょうか.当然自戒を込めてです.

すべての研究者やエンジニアが必ずしも災害研究・災害対策に関わる必要はないと思います.かくいう自分もこれまで真っ正面から関わってはいません.ただ,関わるのであれば,人の生き死にに繋がることを強く意識しない限り「災害時に役に立たない」研究をやっているだけになる可能性が高い.その点を自分の中で,もう一度確認しておきたいと思います.

謝辞

今回の東日本大震災ビッグデータWSの運営委員会として尽力してくださったGoogleの山崎さん,賀沢さんにまずお礼申し上げます.また,データの提供をしてくださった朝日新聞社,JCC,Twitter Japan,日本放送協会本田技研工業,レスキューナウ,ゼンリンデータコムの担当者の方々,またMLや#shinsaidataでディスカッションをして,コメントをしてくださった参加者の皆様に感謝申し上げます.