Big Tent 2012 -自然災害とIT活用に関する国際会議-に参加してきた

Googleが開催していたBig Tent 2012 -自然災害とIT活用に関する国際会議-に参加してきた.たぶん全体的な内容はGoogle自身によってblogで公開されたり,参加者によるblog報告やツイート,togetterあたりでまとめられるのではないかと思うので,ここでは割愛.

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(追記)togetterにまとめられていましたね.しかし,ツイートだけで全体像を掴むのは厳しい….Google or 有志によるblog報告が待たれる….
Big Tent Sendai summary of tweets #bigtentsendai

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やはり自分の関心であるネットの情報とリアルをどのように繋ぐべきかという内容のディスカッションが行われた「ネットからリアルへ:救助・救援・復興まで、被災地における支援の計画と管理」についてまとめてみる.

モデレータはMIT メディアラボの石井先生(初めて生で見た!でも,モデレータなのでいつもの石井節はなし), クライストチャーチ・スチューデント・アーミー創設者のサム・ジョンソンさん,amazonの渡辺弘美さん,ヤマト運輸の田中従雅さん.

amazonの話

amazonの欲しいものリストを使って,被災者に物資を送る運動について.もともと欲しいものリストはギフト用途に使われていたものだった.しかし,twitterを中心に,被災者の人たちがほしいものリストをつかったらどうか?というアイデアが生まれ始め,amazon日本社長によって導入が決定され,取り組みが始まった.それが2011年4月7日.

twitterやFBで様々な支援物資需要情報は流れてくる.しかし,どのほしいものリストが本当の情報なのか(なりすましじゃないのか)を判断することが難しい.そこで,最初は被災者と直接コンタクトを取ることで,スタートアップした.最初のほしいものリストが使われたのは陸前高田の消防団,高田分団であった.携帯で連絡を取ったときに最初に言われたときは,お風呂が欲しいということだった.ほぼ震災から1ヶ月後であったにもかかわらず,陸前高田ではまだ誰もお風呂に入れていなかった.高田分団のオオサコさんはみんなのためにお風呂を作ろうと考えた.そのため,お風呂を作るための工具が必要だった.欲しいものリストは通常はセルフサービスでつくるものだが,今回は緊急事態だったので,ほしいものを携帯で聞いてamazonが作成し,amazon.co.jpに転記し,社長がそのリストについてツイートした.100以上あるアイテムが驚くべきことだが1分も経たないうちに全てが購入済みになった.

重要なことは相互信頼をつくること.amazonとしてはほしいものリストの悪用は避けたい.そこで,避難者と支援者の相互信頼をつくるための仕組みを考えた.それはありがとうのメッセージを写真とともに載せるサイトである.支援者が送ったアイテムが使われていることがわかるので,支援者は更に支援を続けるためにアイテムを送るという行為が続く.単に1回切りの関係性にしないことが重要.

ヤマトの話

ラストワンマイルをどのように運ぶかについて.3/23から救援物資輸送協力隊をつくり,車両200台,人員500名(述べ4000台,人員14000人)を被災地への救援物資輸送にヤマトは協力した.また,142億円の寄付を行い,被災地復興に協力した.

3/23の朝日新聞の有名な写真がある.南三陸町のがれきの中でヤマト運輸のトラックが走る写真.これは被災地復興の第一歩と捉えられたのではないか.また,寄付金では仮説魚市場の復旧に利用した.市場は平常時にヤマトを利用するお客さんである.そのような市場を復興することが被災地の仕事をつくり,物流を生みだし,復興に役立つと考えた.

また,これは本社がやったことではなく,後からわかったことだが,被災地では(被災した)ヤマトの社員が自主的に普段の経験を活かして救援物資の運搬を行っていたことがわかった.これは本社からの指令よりももっともっと前の段階であった.

クライストチャーチのスチューデント・アーミーの話

クライストチャーチの地震の際に,FBをつかってボランティアグループをつくった.やったことはNZ軍と連携して,道路から出てきた泥を取り除くというシンプルなタスクである.しかし,新しいボランティアがきたときに,すぐに活動に同期できるようなハブとなった.

我々はFBで1800人の学生を組織した.それぞれ前日にFBで指示を行い,ある特定の地域にボランティアとして派遣した.どこにヘルプが必要なのか,1000人以上を送るので,本当にヘルプが必要な場所を特定することが重要.マネジメントツールとしてgoogle mapを利用した.

災害になって,人々はボランティアをしたい.何かをやりたいという気持ちを持っていることがわかる.しかし,ボランティアのトレーニングをしたことがないので,参加しづらい/参加できないと思っている人たちがたくさんいる.そのような人たちを拾い上げること.長期的なゴールはもたず,いまやるべきことだけを考えていた..

ディスカッションで

  • amazonはなぜほしいものリストの利用をしたのか?通常の緊急支援物資網との違いは?

最初,県庁にいってamazonが手助けできますよと言いに行ったが,各避難所で何が必要かを県庁が完全に把握していなかった.それだけでなく,平等性の問題があった.避難所間の平等性を考慮して.県庁はほしいものリストをつかうことをためらった.しかし,自分たちはその時点で重要な問題は平等性よりも緊急性だと感じた.そこで,方法論を変えて,ボトムアップの方法論に変えて,各避難所と連絡を取った.

  • ラストワンマイルの難しさ

安否情報と物流は連動している.amazonのやり方(ほしいものリスト)ならやりやすかったが,旧住所に親戚などが支援物資を送るというケースが多く,ヤマトとしては大変だった.各個人の安否情報,どの避難所に非難しているのか,それらの情報を有していないと物流のラストワンマイルが機能しない.誰がどこにいるかという情報を集めること,共有することがとても重要だと認識が強まった.

  • amazonは今後ニーズと供給のマッチングを行うというビジョンはあるのか?

もう一つの事例を紹介したい.仙台市仙台市の避難所向けにほしいものリストをつくりたいという動きになった話である.仙台市では衛生処理用のビニール袋が必要だった.しかし,HPに載せてしまうと何トンという量のビニール袋が送られてしまう.それを保存したり,整理することが当時はとても難しかった.そのため必要な数を管理したいという要求があり,ほしいものリストでは要求量以上の量は送られないので,はっきりとしたニーズを支援者に伝えることで,オペレーションコストを下げることができた.これは被災地における緊急物資支援においてとても重要ではないだろうか.

  • ほしいものリストはこれはただ単に情報の共有だけでなく,経験の記録にもなったのではないか?

何軒くらいこの地区でなくなったのか,どこで何がどれくらい必要だったのか?ということが今回のほしいものリストデータやそれが解消されていくログによってわかるのでは?このような需要情報を記録として残していくということは考えているのか?

ふんばろう東北の話.彼らはどのようなものが各家庭で必要かということをリサーチし,その情報を集め,google docで集め,FBでコミュニケートして,各家庭ごとにほしいものリストを提供していった.別の話ではクライストチャーチではオークショニングのサイトがあった.ものや人的資源がないときはそこでマッチングが行われた.災害時には学生の能力が過小評価されやすいが,学生ができることはとても大きい.

  • 今回の話はサプライ側と需要側の話であるが,Aという会社がものを供給していて,Bも供給している.競合している.たとえばヤマトにも競合がいる.災害時には競合相手と協力することはあるのか?

本来協力があるべきであるが,民間企業である以上,自分たちの企業イメージを上げていくということもある.その意味において我先で行動してしまうのも事実.(ヤマト)

理想的には競争相手とも政府とも協力しなければいけない.しかし,政府・地方自治体との協力もなかなか難しい.民間企業と公共団体では方針が大きく異なる.前述の公平性の観点のように,民間企業はいまできることをとりあえずやることを考えるが,公共団体はそれによって不公平が生じてしまうことを避けようとする.そのすりあわせは難しいが,協力は重要だと考えている.(amazon)

以上,メモ終わり.ちょっと正確じゃない部分もあるかもですが.もちろん今回の内容はGoogleやamazon,ヤマトのポジショントークではあるかもしれないですし,それによってこれらの企業のみよくがんばっていたということはできないのでしょうが,十分におもしろい視点と考えるべき問題を与えているのではないでしょうか?

一つ目は緊急支援物資のマッチングに関する問題です.東北大学の土木系教員・学生が現在,緊急支援物資のロジスティクスについて,分析・研究を行っていますが,緊急支援物資のロジスティクスに対する問題点が浮かび上がり始めました.amazonのほしいものリスト,つまり需要側の需要情報の表明を行うこと,そして支援側の過剰供給を防ぐ取り組みは単純に被災者が本当に欲しいものを届けるだけでなく,無駄な仕分けコストを防ぎ,よりロジスティクスのスピードを改善できるはずです.これらの需要情報の表明は自分が研究でも考えたい問題の一つですが,なんか良いアイデアが必要です.

二つ目は被災時のラストワンマイルの問題です.通常の物流網は始点・終点がはっきりしていて,どのようにルーティングを行うかということがトピックであるわけですが,この物資の到着地がどこなのかわからない(受取人がどこにいるのかわからない)中でどのようなオペレーションを行うべきかというのは情報システムとともに考えるべき問題の一つでしょう.

と,リアルタイムでメモとりながら久々のブログ更新してみた.なんか変なこと書いてるかも.それはまた今度考える.大学で夕方から用事があるため,全部参加できなかったけど,興味深かったです.あと,ウェスティン仙台でただ飯食べれてラッキーw